映画監督のサム・メンデスの傑作「1917 命をかけた伝令」
「演劇のように時間の流れを共有させ、冷徹な世界に浮かび上がる美しさ」
舞台監督の彼の「キャバレー」を観たスティーブン・スピルバーグが、映画監督の道へと誘ったと言う。
その初作品の「アメリカン・ビューティー」の頃から、映画の常套手段であるカットの切り替えを極力使わないことで、スクリーンの俳優たちの「時間」を観客にも共有させる。
その為に、リハーサルを重ねて作品を仕上げていく演劇的スタイルだと、映画ジャーナリストの斉藤博昭氏は言う。
映画「007 スカイフォール」では、シリーズ最高の興行成績を叩き出す。
撮影監督は、アカデミー賞の常連の「ブレードランナー2049」などを手掛けたロジャー・ディーキンス。
地を這い上天を舞う縦横無尽なカメラワークを駆使して、圧倒的な映像美を作り出す神業をやってのけた。
編集は「ダンケルク」でアカデミー賞に輝いたリー・スミス。
音楽は「アメリカン・ビューティー」のトーマス・ニューマン。
1917年。
サラエボ事件に端を発する第一次世界大戦が始まって3年。
西部戦線では、長大な塹壕線を挟んで、ドイツ軍とイギリス・フランス連合軍が睨み合っていた。
4月6日の金曜日、2人の若き兵士が、重要な伝令を伝える任務を担う。
全ての通信手段が遮断された中、最後の頼みの綱となる。
出会いと別れ、生と死の狭間を通りながら、物語は連なっていく。
ワンカットの止まらない映像は、彼らの心境と共にある一体感を覚える。
映画界のトップランナーたちが到達した新たな領域に、誰もが興奮し、圧倒されずにはいられない。
今シーズン、最高の一作。
記憶に留まる作品である。