その種子やがて芽吹き
タタールの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る
さびれた港町の魚深町。
この街では、毎年「のろろ祭」が開催される。
「のろろ」は昔から魚深に祀られている神で、決してその姿を見てはならない。
祭りの日、2人の生け贄が、崖から海に飛び込むと、1人は助かり1人は沈んだままで死体もあがらない。
祭りの夜。
ある6人の町人たちの心は揺れ動き、抑えきれない感情が溢れるのだ。
監督は、吉田大八氏。
「桐島、部活やめるってよ」で、第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞し、一躍有名になる。
東西交易がまだしなんだった中世の時代、ヨーロッパでは「東方には羊のなる木がある」と信じられていた。
この不確実な、想像の木の正体自体が確かではなく、多様性の中にある恐怖や不合理を説いているようにも思える。
錦戸亮演じる市役所職員の月末一。
6人の新たな市民を受け入れる。
しかし、この6人は、全員殺人犯で刑務所からの仮出所であった。
その6人が出会った、「のろろ祭」の夜。
様々な感情が交差する。
月末の元同級生の石田文(木村文乃)
豪華キャストが登場するが、何よりも、田舎町に殺人犯6人がやって来て暮らし出す中、何かが起こるのか?何も起こらないのか?
その不確実性こそ、この映画を観る価値がそこにあると思った。
山上たつひこ、いがらしみきお、両者の原作を、監督吉田大八がどう演出しているのか、必見である!