パスラボ山形ワイヴァンズは、昨シーズンの成績が最下位ということもあり、早くからヘッドコーチの獲得に動き始めていた。
当初から想定していたヘッドコーチ候補に時間をかけてアプローチをしたが、残念ながら合意できず、5月末からは新たなコーチを再リサーチすることになったのである。
Bリーグ関係者や、エージェント、バスケット関係者など、様々な信頼する方々からの紹介もあり、2人が候補に上がり面談を進めたのが6月初旬である。
そこから約3週間が経った6月29日(月)に、パスラボとして条件が整ったので、ミオドラグ・ライコビッチを、山形ワイヴァンズのヘッドコーチとして発表できたのである。
ライコビッチが住むのはセルビア。
日本とは7時間の時差があり、午後4時の面談だとセルビアは午前9時である。
ライコビッチは、いつもモーニングコーヒーを飲みながらのミーティングだった。
セルビアはバスケット強豪国であり、Bリーグには、アルバルク東京のルカヘッドコーチを始めとする4人のセルビア出身のヘッドコーチが在籍しており、ライコビッチもルカや他のコーチとも食事をしミーティングをするらしい。
事前に、ライコビッチに関する情報は沢山あった。
「バスケットに関してはパーフェクトを望み、妥協は許さない」「物事をハッキリ口にするので、周囲とぶつかってしまう」「彼のバスケットは素晴らしい」「熱くなりすぎてテクニカルファールをもらう」とか、いろいろお聞きした。
それだけ話題が多いライコビッチだけに、キチンと顔を見ながら話をしたかったのである。
山形ワイヴァンズとしては複数のヘッドコーチ候補がいることも、ライコビッチにも伝えてあったが、合計3回のリモート面談を重ねる過程の中で、条件面やフィロソフィーの明確化で、次第に彼に修練されていったのである。
2シーズン前に、ライコビッチ率いる西宮ストークスと山形ワイヴァンズとの戦績は、4試合中ワイヴァンズの1勝3敗。
その時の試合は、自分もとても印象があり、敗戦の夜に、当時の小野寺ヘッドコーチと話をした。
「西宮のパス回しやチームバスケットは、山形ワイヴァンズの目指しているバスケットと似ているのでは?」という自分の質問に、小野寺ヘッドコーチは、「やはり、セルビアのバスケットはチームバスケットで良いバスケットですね。」と話していた。
その当時の西宮ストークスのシーズン後半戦の勝率は78%であり、リーグ1位の成績であった。
彼と話す中で、彼は常にパーフェクトを目指す方であると感じた。
そういう方だけに「突破力」や「推進力」があると思った。
しかし一方で、周囲のスタッフや関係者との関わり方で、トラブルやハレーションも出がちなのかな?とも思った。
だから、意見が違った場合でも、「お互いリスペクトしながら合意形成を目指そう」と話し合った。
その時、ヘーゲルが唱えた「テーゼ・定立」と「アンチテーゼ・否定立」の対立の中での「アウフヘーベン」し新価値を創造する必要性の話をしたら、ライコビッチもエージェントのラドッシュも大きく頷き納得したのである。
1回の面談は、2時間にも及ぶ事もあったのである。
2回目の面談からは、ライコビッチは既に選手獲得も含めて自身の考えを自分たちに伝え、この段階でのチームづくりに主体的に関わってくれた。
その際の会話も、とてもクレバーで分かりやすく、理路整然としていた。
25年の指導歴を持ち、セルビアの世界選手権優勝などにも関わった経験がある。
これまでのパスラボ山形ワイヴァンズのヘッドコーチの中でも、俊逸の存在になるとワクワクしている。
ワイヴァンズでは、複数年のヘッドコーチは金澤ヘッドコーチのみである。
是非、ライコビッチには、複数年、腰を落ち着けて山形ワイヴァンズの魅力を高めて欲しいとお願いしたのである。
ただ新型コロナウイルスの影響で、日本にいつ来られるのかが心配であるのだが…。