スクリーンに映し出される東京、パリ、ニューヨークの街並み…それに包まれるように、二人の物語が綴られていく。
「幸福の硬貨」が流れる中、未来は過去を変えていく。
原作の平野啓一郎氏は、出会ってから6年の間に、わずか3度しか顔をあわせることのなかった2人の珠玉の感情のカタチを、「ページをめくる手が止まらない」小説ではなく、「ページをめくりたいけどめくりたくない、ずっとその世界に浸りきっていたい」ような小説…「マチネの終わりに」をもたらした。
1999年に、23歳で芥川賞に輝いた平野作品の初の映画化である。
「容疑者Xの献身」「アマルフィ 女神の報酬」などで、主演の福山雅治を熟知している西谷弘氏が監督を務める。
知性と正義感を持った優秀な記者で、繊細な感性を併せ持つ。
日経アメリカ人の婚約者(伊勢谷友介)がいる。
多くのシーンに、東京、パリ、ニューヨークの街並みや季節が映し出される。
その空気感や香り、風土や歴史に培われたリアリティを、不思議に感じてしまう映画であり、その様々な空間と、過去・現在・未来と続く時間の流れが、ゆっくり心に浸透していくのだ。
いや、むしろ空間や時間のリアリティよりも、それらを凌駕する二人の刹那的な葛藤が心を揺さぶるのである。