1970年代、東映の代名詞ともなった、深作欣二監督の「仁義なき戦い」
アウトローを描いた東映は、男の持つ怒りや悲しみ、プライドや泥臭さを、「ヤクザ映画」として世の中に問いかけた。
これが見事に大ヒットしてシリーズ化される。
あれから40年が経ち、アウトローやヤクザ、血湧き肉踊るような男達の戦いを描く映画もドラマも、次第に社会からタブー視され、非日常の世界に追いやられていく。
テレビの刑事モノのドラマでも、殺人事件を起こしたり、銀行強盗を犯した犯人たちは、逃走する時に、車に乗り込むと、わざわざシートベルトをしてから走り出さなければならない。
くわえタバコや、タバコのポイ捨ても、今やテレビのドラマや映画でも、ほとんど見なくなった。
つまり、非日常、非リアルな世界が描かれる。
リアルの追求が、テレビやスクリーンから消えかかった今だからこそ、リアルでシリアスな男の意地とプライド、女の情愛と献身の熱量ある映像に価値があるし、観ている自分たちには、懐かしくも斬新に感じるのだ。
昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島県呉原市。
巨大暴力団組織・五十子会系の加古村組と、地場の暴力団・尾谷組の抗争が勃発。
役所広司演じる、マル暴のベテラン刑事の大上刑事と、松坂桃李演じる広島大学卒業のエリートの新人刑事・日岡が、共に奔走しながら、男同士の意地とプライドをかけた戦いに巻き込まれていく。
松坂桃李が演じるエリート刑事が、それまで持っていた「正義」の概念であったり、いわゆる「美辞麗句」が全く通用しない世界があること、それに立ち向かう武器とは何であるのか?
そんな事を、葛藤しながら自分のものとして成長していく姿が、とても面白い。
松坂桃李の渾身の一作である。
人気クラブ「梨子」の美人ママを演じるのが、真木よう子演じる高木里佳子。
呉原市の裏の世界を熟知し、大上刑事の理解者で同士のような仲である。
何のために暴力団と対峙しているのかを、取引やバーターをしながらも、その目的が何であるのかを、大上は語らない。
しかし、ある事件をきっかけに、松坂桃李演じる日岡刑事の中に、大上の男の熱き信念が手渡されていく。
全てを知った、松坂桃李演じる日岡刑事は…。
1つのシンボルは、このライター。
一匹の狼のデザイン。
白石和彌監督は言う。
暴れる役所広司と、それを引き継ぐ松坂桃李の、バディムービーになったことが、とても幸せであるとのこと。
とても以外であったが、ある意味素晴らしい偉業を成し遂げたと思う。
彼女は、山形県在住である。
以前は、山形新聞にコラムを連載していた。
次回作「狂犬の眼」。
「暴虎の牙」も新聞連載が始まっている。
紀伊宗之氏は、絶対に東映で映画化しなければと直感的に思ったそうだ。
天野和人氏は、全員が振り切って仕掛ける…圧倒的なクォリティで。
そんな、関係が深い作品。
自分も製作に名を連ねている。
チケットは、全席指定なので、お早目にお求めください。