人は、誰もが悩み、誰もが不安を持ち、永遠に続く漆黒の闇の中に、放り込まれたような気持ちになる時があるのではないだろうか?
明日を信じることもできなくなってしまう…。
そんな時代だからこそ、この「ナミヤ雑貨店の奇蹟」が、公開されたことは、大袈裟かも知れないが、まさに時代が要請した一作となっていると思う。
この映画の為に書き下ろした主題歌「REBORN」
この曲を、劇中で歌うセリ役の門脇麦のライブシーンが、とても素晴らしかった。
まず、東野圭吾氏しか書けないだろう原作が俊逸である。
そして、映像化は無理と言われたこの作品を、見事な映画として作り上げた、廣木隆一監督は、やはり当代 No.1の監督であると思う。
先日、廣木隆一監督とご一緒した時、皆んなで調べたが、現役監督で、最も映画製作本数が多いのが、山田洋二監督が1位で、廣木隆一監督が2位であった。
自分との出会いは、2009年の「余命1ヶ月の花嫁」の時。
それからは、YMF山形国際ムービーフェスティバルの常連となってくださり、廣木映画を公開する度に、山形に来て、羽根を休め、リセットしていかれるのだ。
ハードでバイオレンスな映画、セクシーで男と女の恋の映画など、製作ジャンルは広いが、彼の真骨頂は「人間愛」と「幸福の希求」だと思う。
西田敏行演ずるナミヤ雑貨店の店主。
悩みを誰にも相談できない人たちが、店の閉まったシャッターの郵便入れから、悩みを書いた手紙を入れると、翌朝、ナミヤ雑貨店主の西田の書いた返信が、外の牛乳箱に入っている。
萩原聖人演ずるナミヤの息子は、父の一人暮らしを気にかけ、病になり余命を知り、ナミヤ雑貨店を閉めることとなる。
ナミヤ雑貨店で過ごす最後の夜。
1980年のことであった。
しかし、その時代悩みを相談していた人たちの悩みや夢が、32年後の2012年の人たちの人生に繋がって行くのだ。
もう、誰も住んでない空き家のナミヤ雑貨店。
そこに忍び込む若者3名。
その夜、様々な不思議なことが起こる。
時を超え、それぞれの人生が交錯する。
そして、繋がって行くのである。
メールが全盛の時代、活字の手紙の暖かさを再認識した。
どんな夜でも、必ず朝が来るのだ。
開けない夜はない。
そして、冬の次には、必ず春が来る。
注いだ愛に無駄がないこと、そして、それを信じるチカラが奇蹟を生むのである。
この映画を、観れたことで、まだ頑張れると思ったのであった。