しばらくぶりで格別な時間を過ごせた。
新型コロナウイルス感染症が現れてから、世の中がとても窮屈な社会となった。
ほとんどの人が、日常でも、できるだけ人とは会わず、外食は避け、多くを我慢している暮らしに変貌した。
そんな中で、こんな素敵な映画に出会えたことを、心から嬉しく思うのである。
原作は直木賞作家の西加奈子さんで、監督は「ドラえもん・のび太の恐竜 2006」や「怪獣の子供」などの渡辺歩氏。
キャラクターデザイン・総作画監督は小西賢一氏で、脚本は大島里美さん。
アニメーションデザインは、「映画 えんとつ町のプペル」や「鉄コン筋クリート」など、圧倒的なクオリティと世界観を持つSUTADIO4℃。
アニメーション界の最高峰の鬼才が集結し、奇跡のコラボレーションが実現した。
そして、漁港の船に住む、ちょっと訳ありの母娘が紡ぐ、感動のハートフルコメディができあがったのである。
「生きてるだけで丸儲け」の明石家さんまが、企画・プロデュースし、今の世に元気を注入する。
本作の主題歌には、さんまさんが「人生の教科書」としている、吉田拓郎さんの「イメージの詩」が選ばれ、GReeeeNがサウンドプロデュースを手がける。
さらに、とても心に染みるエンディングテーマ曲「たけてん」を、GReeeeNが書き下ろした。
母娘の2人家族の、肉子ちゃんとキクコ。
食いしん坊で脳天気な肉子ちゃんは、情にあつく惚れっぽいからすぐ男に騙される。
多感な小学5年生のキクコは、そんな母を最近ちょっと恥ずかしい。
漁港の船に住む母娘の秘密が明らかになる時、2人に最高の奇跡が訪れる。
多くの漁港で暮らす仲間たちが、いつしか2人の応援団になっていく。
自分の母の故郷が、宮城県牡鹿郡女川町出島。
10年前の東日本大震災によって、今ではほとんどの人たちが島を離れたが、その港町にもどこか似ていて、とても懐かしく涙が零れそうな場面もあった。
そして、アニメーションが抜群に美しい。
母と娘が、流れ流れて北へ北へ。
辿り着いたのが、雪が降る東北の港町。
貧しいので、肉子さんは一生懸命働く。
船上での暮らしは、どこかロマンを感じる。
そして、自然が残る、どこかノスタルジックな港町は、人の心の輪郭を見えやすくするのだ。
肉子ちゃん役は、大竹しのぶさんが声優として熱演。
キクコ役は、キムタクの娘のCocomiさん。
正統派のイメージがぴったりの演出であった。
その他にも、花江夏樹、山西惇、中村育ニ、吉岡里帆、マツコ・デラックスなど、楽しい配役だった。
最初は、ドタバタ劇のイメージで観ていたが、物語が進むにつれ、心が洗われる素晴らしい感動をもたらしてくれた。
是非、一人でも多くの人たちに観て欲しい。
そして、人との関わりの素晴らしさを、感じて欲しいのである。