未だ読めずにいる「最後の手紙」に込められた、初恋の記憶…。
これまで、「Love Letter」「スワロウテイル」「四月物語」「花とアリス」「リップヴァンウィンクルの花嫁」など、数々の名作を世に送り出してきた岩井俊二監督の珠玉のラブストーリー。
今回、岩井監督としては、初めて出身地である宮城県を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まった、ふたつの世代の男女と、それぞれの心の再生と成長を描く。
行定監督が「私の師匠」と呼ぶ岩井監督。
成島監督も三島監督も、岩井監督をリスペクトされていた。
さらには、自分と同年代であり、山形市と仙台市の間にある関山峠の作並温泉の側がご自宅だったそうで、そこは森が繁り川のせせらぎが聞こえる場所だったと記憶している。
映画を観て、川と河原のシーンが出てきた時、岩井監督の原風景を感じたのであった。
松たか子演じる裕里の姉である美咲が亡くなり、広瀬すず演じるその娘鮎美から、美咲が遺した手紙の存在を知らされる裕里。
裕里の初恋の相手、福山雅治演じる鏡史郎との再会。
様々な想いが交差し、それぞれが文通を始める。
彼らを繋いだ手紙は、美咲の死の真相、過去と現在、さらには心に蓋をして溜めていた想いを、時を超えて動かしていく。
岩井俊二監督も、自分も含めて、東北に住む人達は、2011年3月11日の東日本大震災を経験している。
皆んなが多くの人やモノや思い出を失った。
だから、今、尚更のように「誰に向かって」「何を渡すんだ?」と、日常の中でその気持ちが先鋭化していくのだ。
FOR WHAT〜何の為に
FOR WHOM〜誰の為に
手紙が、とてもシンプルに、それを表してくれる。
岩井俊二監督も、山形県出身の我々と同学年の小林武史さんも、情緒や感性のスペシャリストだけに、映像も音楽もビシビシ伝わってくる映画となったと思う。
心が洗われる映画。
松たか子さん、広瀬すずさん、福山雅治さん、神木隆之介さんなどなど、庵野監督も良かったけど、俳優陣の演技は圧巻だった。
まだ観ていない方は、日本映画の素晴らしさを体感してほしい。
ムービーオンで上映中。