かつて日本中を笑いと涙で包み、国民的人気を誇った映画シリーズ「男はつらいよ」
旅する車寅次郎こと寅さんが、故郷の柴又に戻ってきては、家族や恋したマドンナを巻き込み騒ぎを起こす。
破天荒で、変わり者で、自由奔放。
でも、その温かくて優しい人柄に、誰もが魅了され、愛され続けた。
そんなフーテンの寅さんが、今年の正月、スクリーンに帰ってきたのだ。
1968年8月27日、「男はつらいよ」第1作が劇場公開された。
山田洋次監督は語る。
「おりしもぼくたちの国は高度経済成長期の途上にあり、活気があって威勢のいい充実した気分が、この国を覆っていたように思う。」
寅さんが生まれる時代背景である。
山田監督が驚くほどの人気で、そこから48作を数えたが、渥美清さんの死によって、49作目の特別編で終わりを告げた。
「先行き不透明で、重く停滞した気分のこの国。そこで生きるぼくたちは、もう一度あの寅さんに会いたい、そして元気になりたいと切に願い、第50作目を作ることを決めた。」と言う。
寅さんの台詞….生まれて来てよかったと思うことが、そのうちあるさ。
それを切に願っていると山田監督は語る。
今回の作品には、往年のキャストがそのままリアルに歳をとって出演している。
なんと言っても、寅さんの妹の「さくら」である。
自分の中では、倍賞千恵子さんではなく、「さくら」のイメージが強い。
ずっと以前から、日本国の女性の代名詞が、「さくら」のような気がしていた。
それは、この映画シリーズのイメージだったのかも知れない。
そして、マドンナ役は、なんといっても5回のシリーズ出演を重ねた、浅丘ルリ子さん。
とても活きいきしていた。
寅さんと人情を通わす家族や親戚、そして、近所の人たちである。
何故か温かく感じる。
さくらの息子としてシリーズに出演してから、約40年の歴史がある吉岡秀隆。
子どもから少年、そして青年と成長する満男役がぴったりであった。
寅さんは、満男を、からかいながらも温かく育てていく。
とても美しく聡明で、素敵な女性として再登場である。
全50作品のポスターである。
さらには全ての回ごとに、1ページずつキチンと説明している。
「男はつらいよ」が、その時々の社会情勢を写しながら製作されていることが分かる。
今回の映画を見終わった時、ある家庭の50年間を見続けた気持ちになり、その壮大な物語に涙したのである。
必ず観るべき作品だと思ったのである。